高級食パン「乃が美」の
フランチャイズ加盟店と本部のトラブルの記事
について知りたい。
こんなテーマに関する記事です。
ネットのニュース記事に、高級食パン「乃が美」のフランチャイズ加盟店と本部のトラブルの記事がありました。
フランチャイズ本部と加盟店間のトラブルは、過去にも複数の事案があります。今回の件に関して、気が付いたことを記載しています。
昨年の2022年12月6日(火)のYAHOO!ニュースで、
高級食パン「乃が美」はやっぱりピンチ? FCオーナー告発、創業者退任で気になるブームの行方
という記事がでました。
元記事は、日刊ゲンダイです。
その記事を見て、
「「乃が美」、おまえもか??」
と思われた方もいらっしゃたのではないでしょうか。
また、2023年3月25日には、文春で、
「もう限界です。自己破産寸前の人も多い」高級食パン「乃が美」 本部とフランチャイズ・チェーン店6社が裁判所を巻き込む泥沼内紛トラブル!
という記事がでています。
どのような状態になっているのか、また、教訓としてどういった点が考えられるのか、下記に考察します。
トラブルの内容
ニュースソースからみるトラブルとしては、下記の2点になります。
・フランチャイズオーナーの一部(有志の会)からの要望書の件
・複数店舗を展開している「株式会社MTK」の訴訟、加盟契約解除の件
それらの内容についてみていきましょう。
フランチャイズオーナーの一部からの要望書の件
加盟店の赤字が続く中、一部の加盟店が、
ロイヤリティ(売上の10%)を引き下げるように、要望書を提出
したというものです。
こういった行動には、加盟店のほとんどが、赤字の状態?にあることが背景にあると言われています。
日刊ゲンダイの記事には、下記の記載があります。
「FCオーナー側の訴えは、売り上げ減によるロイヤリティの減額だけでなく、業界水準からすると、著しく高い売り上げ水準を維持しないと利益が出ない構造になっているというものでした。最近ではブームが落ち着き、店舗の閉店が相次いでいました」
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/315483
また、文春オンラインでも、本件に関する記事が配信されています。
下記に一部を引用します。
「この30カ月ぐらい、12月の繁忙期を除きずっと赤字が続いています。
にもかかわらず、乃が美ホールディングスと、同社に出資するファンド『クレアシオン・キャピタル』が本部の収益を維持するため、FCオーナーから徴収するロイヤリティを下げようとしないのです。
経営に行き詰まり、『このままでは自己破産するしかない』と考えるオーナーが相次いでいます」
2013年に前社長の阪上雄司氏、現社長の森野博之氏らによって創業した乃が美。「トーストしなくても耳まで口溶けが良い」という食感が人気を集め、大ヒット。2018年には全国100店舗を突破し、売上は100億円を超えた。
躍進を支えてきたのが、
社内用語で「はなれ」と呼ばれる加盟店舗=FC店舗
だ。約230店舗のうち、直営店はわずか16店舗。大半の店舗がFCなのである。
2019年には、同社の経営面に大きな変化があった。東京の投資ファンド「クレアシオン・キャピタル」から出資を受け入れたのだ。
「『クレアシオンとともに上場を目指す』とぶち上げた。発案は森野氏。阪上氏がそれに乗った形です。当時、乃が美の株主比率は森野氏と阪上氏で半々でしたが、
2人は保有する株の約半数をクレアシオンに譲渡。
それぞれ20数億円の売却益を得たと聞いています」
ところがこの頃、乃が美のパンの売れ行きに陰りが見え始める。翌2020年からはコロナ禍に突入し、店舗の売上は落ち込んでいく。FCオーナーにとっては、本部に支払うロイヤリティが大きな負担となっていた。
FCオーナーたちが要望書を提出するも…
「当初、ロイヤリティは売上の10%という契約でした。でも、売上が減る中、これを支払うと赤字になってしまう。本部とロイヤリティの引き下げ交渉を行ったのですが、『本部の収入が下がると、上場に差し支える』という理由で応じてもらえませんでした」(同前)
経営陣に対して不信感を募らせていくFCオーナーたち。そして2022年2月、FCオーナーたちは「はなれの会」と称する団体を結成。本部に対して、ロイヤリティの減額や経費の削減を求める要望書を提出するに至った。
しかし、「本部からFC店舗にロイヤリティ分の資金が一度だけ補填されましたが、結局、10%という割合は変わりませんでした」(署名に応じたFCオーナー)その後、社長を務めていた阪上氏が3月31日付で退任。食パンの開発者ら創業メンバーも次々と退社。“乃が美の創業の味”を知るメンバーは去り、会社には現社長の森野氏とファンド出身者らが残る形となった。
おおまかな経緯としては、下記となっている。
https://bunshun.jp/articles/-/59093
2018年;全国100店舗を突破し、売上は100億円超え。
2019年;創業者が、株式の半数を投資ファンドに売却。
2020年;コロナ禍により、店舗の売上げが下降。
2022年;創業者の一人、阪上雄司氏、3月31日付で社長を退任。
開発者ら創業メンバーも次々と退社。
正直、投資ファンドに株式を売却した時点で、
経営者の事業に対する取り組み姿勢
が、見えたように感じます。
それに追い打ちをかけて、コロナ禍で売上げ減となり、それに対する有効な対策が打てないまま、店舗の経営状態の悪化が表面化したとなっています。
要望書に対する対応をみても、
事業として、将来的に、明るい状況とは言えない??
という印象を受けます。
ただ、ロイヤリティーの数値は、契約時に本部と加盟店間で取り交わしたものですので、
それを下げないから本部に非がある、という論理は成り立たない
という一面もあります。
いずれにしても、本部としては加盟店の経営改善をすべき立場にありますので、なにかしらの対策は必要であると言えます。
複数店舗を展開している「株式会社MTK」の訴訟、加盟契約解除の件
東京都内で、「乃が美」を複数店舗運営していた「株式会社MTK」の訴訟問題も、「乃が美」と加盟店の関係を象徴するような出来事と言えます。
下記のプレスリリースに、その詳細が記載されています。
その内容を引用しておきます。
MTKは乃が美に対し、情報提供義務違反・説明義務違反及び契約締結後の経営指導義務違反を理由に、損害賠償金1円にて提訴。
MTKは乃が美ホールディングスとクレアシオン・キャピタルによるFC経営実態を世論に問う2019年に乃が美とFC契約を締結しましたが、三方よしで100年企業を目指すと謳う経営理念とは真逆の経営を貫く乃が美。
2021年よりMTKは乃が美に対し経営内容について議論を求めてきましたが、乃が美は直営店の業績など企業情報の開示を頑なに拒否し続け、ついに2022年7月11日経営理念相違の溝が埋まらず、開業から約2年間1度も利益を出すことなく、MTKはFC契約を解除しました。
乃が美の契約時による情報提供義務違反・説明義務違反及び契約締結後の経営指導義務違反を理由にMTKからFC解除を通知しましたが、乃が美はそれも認めず契約書の法的効力を主張。
その後MTKは独自路線での事業継続を模索するも、乃が美が裁判において法的な強制力を行使したことにより、残念ながら2022年9月末に全8店舗閉鎖に追い込まれました。高級生食パン専門店乃が美のFC事業による事業損失は、企業の業績として甘んじて受け入れるものの、乃が美のようなFC事業史上稀に見る加盟店を無視した経営は、未だに多くの加盟店オーナーが借金をしてロイヤリティを支払うという理解しがたい現実を生み出し続けています。
乃が美とクレアシオン・キャピタルは最後までMTKとの協議に応じず、MTKは大阪地方裁判所の下、企業と企業により締結した契約内容の遵守という観点から、法的効力の力にねじ伏せられましたが、従業員の人生を背負い、経営理念を掲げて、社会の中で事業を営む経営者として、乃が美及びクレアシオン・キャピタルの実態までこのままねじ伏せられては、残された多くの加盟店に関わる従業員の皆様までもが近い将来、我々と同じ道を辿らなければならないという現実を踏まえ、この度提訴という形で世の中の皆様にご判断いただきたいという思いで、大阪地方裁判所に訴状を提出いたしました。
今後は裁判を通じて、乃が美とクレアシオン・キャピタルによるFC事業運営実態のできる限りを表に出し、事実として記録に残し、今後の日本のより良いFC事業発展のために役立てていきたいと考えています。大阪地方裁判所第24民事部 損害賠償請求事件 訴訟物の価額1円
令和4年8月11日提訴
令和4年8月14日大阪地方裁判所受理まもなく第一回の期日が決まります。
MTKは事業撤退の結論として、この裁判を通してできる限りの事実を明らかにして参ります。
また、残された多くの加盟店オーナー、加盟店従業員の皆様にとって少しでも状況が改善する力になれればと願っております。株式会社MTK 代表取締役 横川 毅
https://digitalpr.jp/r/62315
内容をみると、
開業から約2年間1度も利益を出すことなく、MTKはFC契約を解除
との記載があり、本ケースにおける「乃が美」の事業では、まったく利益のでない状況だったことがわかります。
また、
企業と企業により締結した契約内容の遵守という観点から・・
とあるように、トラブルが発生した場合は、裁判所は、
契約書に記載されている内容
によって判断されるということになります。
もっとも、通常は、こういった争いになる前に、協議して解決するということが一般的なのですが、本件においては、
乃が美とクレアシオン・キャピタルは最後までMTKとの協議に応じず
との記載あり、正常な話し合いができなかったことが伺えます。
もっとも、乃が美とクレアシオン・キャピタル側の見解も気になるところですが、この件に関する見解に関しては、コーポレートサイトには、特に記載がありませんでした。(2023年4月23日時点)
サイト上のニュースリリースの箇所には、
2022年4月13日 コーポレートサイトオープンのお知らせ
の記載のみという状態です。
少なくとも、訴訟の当事者の場合、コーポレイトサイトで、見解を記載すべきでしょう。
また、下記サイトでも、関連記事が掲載されています。
高級食パン「乃が美」FC本部は不当。ジーのウィルプラン横川氏が提訴。
一部を抜粋すると、下記のような見解が示されています。
21年12月1日に、圧倒的に美味しくリッチに変えたと100円の値上げを実施したが、22年4月27日から販売された復刻「「生」食パン」と称した食パンでレシピを元に戻すも100円値上げの価格を維持し、乃が美側のプレスリリースで「「乃が美」復刻「生」食パン」発売1か月で100万本のヒットと配信した。
https://www.foodrink.co.jp/news/2022/08/3175914.php
しかし、
実際には全店で売上が上がっておらず、
MTK側は「嘘を嘘で繋ぐブランディング」と称している。他にも裁判でひとつひとつ明らかにしたいとする。
「「乃が美」復刻「生」食パン」発売1か月で100万本のヒット」というのは、ウソだったのでしょうか??
高級食パン「乃が美」のトラブルについての考察
本案件のトラブルからの考察としては、下記の3つの視点を深掘りする必要があると言えます。
・流行の事業に対する危険性
・FC本部の経営姿勢
・契約内容の重要性
流行の事業に対する危険性
流行、ブーム性の強い事業は、結果的に、一過性になってしまい、長期的な事業継続に対するリスクがある。
このことは、過去のFCブランド、例えば、「10円饅頭」などの事例をみてもわかる。
FC本部の経営姿勢
事業は、経営者の取り組み姿勢、考え方に大きく左右されるというか、それがすべてですので、その点を見極める必要がある。
FCの場合は、経営の一部の機能をFC本部に委ねているということと、その為のコストを考えると、当然のことながら、
FC本部の経営姿勢
が、加盟店の経営にダイレクトに影響することになる。
契約内容の重要性
フランチャイズにおける契約内容を細かくチェックすることが大切である。
基本、本部に有利な内容になっていますので、加盟時には、契約書の内容が、どこまで許容できるかを確認しておく必要があります。
さいごに
「乃が美」の場合、投資ファンドに株式を売却してから、経営の方向性に影響がでたということが言えなくもないですが、株式を売却すること自体も、「乃が美」の社長自身の判断です。
そういった観点で考えると、当然のことながら、
FC加盟時には、その本部の社長の事業に取り組み際の姿勢、人間性、考え方
をある程度は、見極める必要があります。
単に、表面的なイメージや数字だけではなく、本質的なものが、
事業が低迷した時の対応
に、違いとなって現れてきます。
実際のところ、見極めるのはなかなか難しい部分もありますし、完璧な人はいませんが、少なくとも、
自身の考えに近い考えかどうか
で判断することもひとつの方法と言えます。
以上、高級食パン「乃が美」に関する考察についてでした。